エジプトが、大変なことになっている。
いまエジプトで起きている反政府デモ、多くの日本人にとっては遠くの国で起きている出来事でしょう。しかし私にとっては自分の事のように感じられる出来事です。
なぜなら、私の友人たちが騒乱の中心地であるカイロに留学しているためです。
去年の10月に彼女たちを訪ねにエジプトに行った経緯もあり、自分が訪れた場所がめちゃくちゃになっていることに驚きと不安を隠せません。
このデモは25日に始まり、いまなお続いています。
初めはデモがカイロで起きたというニュースをBBCのサイトで見て、友達に大丈夫ー?という軽いメールを送っただけでした。いつもならすぐに返事が返ってくるのに、二日たっても音沙汰なく、忙しいのかなーと思っていました。
しかし28日にはエジプトのインターネットが遮断され、そこで「今何がエジプトでおこっているか」を理解したのです。
いまエジプトで起こっていることはただの暴動ではない。もっと違う、もっと大変な何かだ。
今、ここに私の大切な友人たちがいる。画面の向こうにある、火の手の上がるカイロに彼女たちがいる。
このことに気付いたときに背筋が凍りました。
ハンガリーにいる私には何もできない。でもせめて何が起こっているのか、彼女たちの身が危険にさらされていないか知りたいと思いました。慌てて情報収集をしながら、私がいまさら気づいたエジプトの現状を、世界中が注視していることを理解したのです。
事件のいきさつについては最後にまとめた関連リンクからわかりやすくご確認いただけますが、私からもあらましを説明させていただきます。
25日に起きたムバラク現大統領退陣を求めるデモはFacebook、TwitterといったSNSを通じて計画・告知されて実行されました。デモを行う一般市民の情報共有がインターネット上で行われていたことが、28日に政府がネット遮断をした理由です。
いまや「使えて当たり前」になったインターネットが使えない-----距離も時間も関係なく人と人をつなぐ『どこでもドア』は、実はこんなにも脆いものだった。
しかし同時に、インターネットは強大な力を持って世界を駆け巡っていることを、実際目に見える形で再確認させられました。
私が最初に見たのはTwitterでした。現在世界中の約2億人が利用しているツイッターではリアルタイムに情報が流れ、共有されていきます。#egyptというハッシュタグを使ってエジプトに関するつぶやきだけを集めると、世界中からエジプトに関する情報がどんどん投稿され、瞬間的に更新され続けていきます。追っても追っても常に新しいつぶやきが溢れだす、まさに「情報の洪水」。
ツイッター利用者はカイロの様子をライブ配信しているアル・ジャジーラの放送を見て、ツイッターに書き込み、それを見た他の利用者が情報を拡散していく。または現地にいる人が何らかの手段で接続し、生の声を書きこむ。ある人はアラビア語を英語に翻訳し、またある人は英語で書かれたことを日本語に翻訳して世界中の数え切れない人たちが“つぶやき”続ける。
使っているツールは現代のものでも、ここで行われているコミュニケーションは単純な「口伝え」です。しかしそうやってエジプトという遠い国で起こっていることを、世界の誰とも知らない人達と共有し、普通の一般市民たちがマスコミというフィルターを通すことなく現地の情報を手にしていることは、今までの歴史では考えられない手段ではないでしょうか。
デモのはじまりにしても、エジプト国内の見ず知らずの人たちがFacebookやTwitterといった手段で政府への不満を共有し、実際に行動に移しています。
通信技術が未発達だった時代から新聞、ラジオ、テレビと媒体の進化や変遷はあっても、情報を手にする前には常に「情報を流す人間」がいて、情報操作が行われてきました。しかしインターネットを媒介することで、一人の人が同時に受け取り手と発信者になることができます。今までは無力だった大衆の一人が報道官になり、微々たるものかもしれませんが、全世界に対して発言権を持っているのです。
象徴的なのが、日本のツイッターユーザーの反応だと思います。日本のメディアでは、今回のデモは正確に伝えられていないと感じている人が多いようで、自分たちで情報の流れを整理し、真実を共有しようとしています。そこになんの利益も発生しないにも関わらずです。
いま、世界中の人々がエジプトで何が起こっているかを「目撃」しています。それを可能にしているのはインターネットの力です。そしてもう一つの大きな要因が英語という世界の共通言語でしょう。
留学に来て実感したことですが、たとえ「その国の言語」が全くできなかったとしても、英語という共通言語のおかげでバックグラウンドも人種も違う人とコミュニケーションをとることができます。同じことが世界規模の情報共有でなされていると感じました。
たとえば、英語より理解できる人が少ないアラビア語のみで情報発信がされれば、アラビア語圏のみにしか情報は伝わらず、世界的に情報共有することはできません。エジプト人は、世界の人に伝える意思を持って英語でメッセージを発信しているのです。
一人のエジプト人青年から、という匿名で投稿された”A Letter to the World ”というブログの記事はエジプト人が何故いま立ち上がり、何のために戦っているかを綴っています。全文英語で書かれたこの記事は静かに広がっていき、人々の同意と支持を集めています。
英語は就職するのに役に立つ特殊な技能でも、旅行のときに役に立つものでもなく、異なる国々から発信されるメッセージや情報を受け取り、同時に自分の意見を世界に発信するためのアンテナになっています。
いくらインターネットで情報収集することはできても、エジプト国内のネットが遮断されている以上、友人の安否という一番欲しい情報を手に入れることはできませんでした。使えるのが当たり前だからこそ正常に機能する、それがインターネットの弱いところでもあります。政府という権力は、いとも簡単に世界とのつながりが断つことができます。
しかし世界のほとんどがネットを利用し、政治や経済など多岐にわたり依存している状況では、エジプト政府が行った「ネット鎖国」がいかに無謀な行為かはっきりしたと思います。ネット遮断したところで怒れる民衆は止まることなく、世界中からエジプトに注目が集まっています。
【関連リンク】
今北産業向け概略&リンク集 as of 1/31 20:22 JST
・エジプト政変のきっかけともなったツイッターを使った日本での情報交換のまとめ(Togetter)です。今からエジプト政変について知りたい人向けにわかりやすくまとめてあります。
TwitterやFacebookで呼びかけ――アラブの政変は何に対する戦いなのか?
・『Buisiness Mode誠』のコラム。今回の政変が“どうやって“、“なぜ”起きたか、そしてどこへ向かおうとしているのかその概要がわかります。
いまエジプトで起きている反政府デモ、多くの日本人にとっては遠くの国で起きている出来事でしょう。しかし私にとっては自分の事のように感じられる出来事です。
なぜなら、私の友人たちが騒乱の中心地であるカイロに留学しているためです。
去年の10月に彼女たちを訪ねにエジプトに行った経緯もあり、自分が訪れた場所がめちゃくちゃになっていることに驚きと不安を隠せません。
このデモは25日に始まり、いまなお続いています。
初めはデモがカイロで起きたというニュースをBBCのサイトで見て、友達に大丈夫ー?という軽いメールを送っただけでした。いつもならすぐに返事が返ってくるのに、二日たっても音沙汰なく、忙しいのかなーと思っていました。
しかし28日にはエジプトのインターネットが遮断され、そこで「今何がエジプトでおこっているか」を理解したのです。
いまエジプトで起こっていることはただの暴動ではない。もっと違う、もっと大変な何かだ。
今、ここに私の大切な友人たちがいる。画面の向こうにある、火の手の上がるカイロに彼女たちがいる。
このことに気付いたときに背筋が凍りました。
ハンガリーにいる私には何もできない。でもせめて何が起こっているのか、彼女たちの身が危険にさらされていないか知りたいと思いました。慌てて情報収集をしながら、私がいまさら気づいたエジプトの現状を、世界中が注視していることを理解したのです。
事件のいきさつについては最後にまとめた関連リンクからわかりやすくご確認いただけますが、私からもあらましを説明させていただきます。
25日に起きたムバラク現大統領退陣を求めるデモはFacebook、TwitterといったSNSを通じて計画・告知されて実行されました。デモを行う一般市民の情報共有がインターネット上で行われていたことが、28日に政府がネット遮断をした理由です。
いまや「使えて当たり前」になったインターネットが使えない-----距離も時間も関係なく人と人をつなぐ『どこでもドア』は、実はこんなにも脆いものだった。
しかし同時に、インターネットは強大な力を持って世界を駆け巡っていることを、実際目に見える形で再確認させられました。
ツイッター利用者はカイロの様子をライブ配信しているアル・ジャジーラの放送を見て、ツイッターに書き込み、それを見た他の利用者が情報を拡散していく。または現地にいる人が何らかの手段で接続し、生の声を書きこむ。ある人はアラビア語を英語に翻訳し、またある人は英語で書かれたことを日本語に翻訳して世界中の数え切れない人たちが“つぶやき”続ける。
使っているツールは現代のものでも、ここで行われているコミュニケーションは単純な「口伝え」です。しかしそうやってエジプトという遠い国で起こっていることを、世界の誰とも知らない人達と共有し、普通の一般市民たちがマスコミというフィルターを通すことなく現地の情報を手にしていることは、今までの歴史では考えられない手段ではないでしょうか。
デモのはじまりにしても、エジプト国内の見ず知らずの人たちがFacebookやTwitterといった手段で政府への不満を共有し、実際に行動に移しています。
通信技術が未発達だった時代から新聞、ラジオ、テレビと媒体の進化や変遷はあっても、情報を手にする前には常に「情報を流す人間」がいて、情報操作が行われてきました。しかしインターネットを媒介することで、一人の人が同時に受け取り手と発信者になることができます。今までは無力だった大衆の一人が報道官になり、微々たるものかもしれませんが、全世界に対して発言権を持っているのです。
象徴的なのが、日本のツイッターユーザーの反応だと思います。日本のメディアでは、今回のデモは正確に伝えられていないと感じている人が多いようで、自分たちで情報の流れを整理し、真実を共有しようとしています。そこになんの利益も発生しないにも関わらずです。
いま、世界中の人々がエジプトで何が起こっているかを「目撃」しています。それを可能にしているのはインターネットの力です。そしてもう一つの大きな要因が英語という世界の共通言語でしょう。
留学に来て実感したことですが、たとえ「その国の言語」が全くできなかったとしても、英語という共通言語のおかげでバックグラウンドも人種も違う人とコミュニケーションをとることができます。同じことが世界規模の情報共有でなされていると感じました。
たとえば、英語より理解できる人が少ないアラビア語のみで情報発信がされれば、アラビア語圏のみにしか情報は伝わらず、世界的に情報共有することはできません。エジプト人は、世界の人に伝える意思を持って英語でメッセージを発信しているのです。
一人のエジプト人青年から、という匿名で投稿された”A Letter to the World ”というブログの記事はエジプト人が何故いま立ち上がり、何のために戦っているかを綴っています。全文英語で書かれたこの記事は静かに広がっていき、人々の同意と支持を集めています。
英語は就職するのに役に立つ特殊な技能でも、旅行のときに役に立つものでもなく、異なる国々から発信されるメッセージや情報を受け取り、同時に自分の意見を世界に発信するためのアンテナになっています。
いくらインターネットで情報収集することはできても、エジプト国内のネットが遮断されている以上、友人の安否という一番欲しい情報を手に入れることはできませんでした。使えるのが当たり前だからこそ正常に機能する、それがインターネットの弱いところでもあります。政府という権力は、いとも簡単に世界とのつながりが断つことができます。
しかし世界のほとんどがネットを利用し、政治や経済など多岐にわたり依存している状況では、エジプト政府が行った「ネット鎖国」がいかに無謀な行為かはっきりしたと思います。ネット遮断したところで怒れる民衆は止まることなく、世界中からエジプトに注目が集まっています。
“インターネット”が世界を動かしている。
この事を今日ほど痛感したことはありません。
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ちなみに私の友人たちですが、無事を確認いたしました!
携帯電話も規制がかかっているという情報を目にしたので、ほんとに駄目もとでかけてみたら機械的な女性の声のあとに「テーッテレッテレ~♪」とやたら陽気な音楽がかかり、
「おいおい・・・こんなに人が心配してるのになんで留守番電話サービスがこんなに陽気なんだよ・・・。ふざけてんのか・・・エジプトェ・・・((#^ω^)イラッ」
と思って切ろうとしていたら「えっなに!?なんで電話かけてるん!?」という声が。
・・・つながった・・・(゜д゜)
(゜д゜)(゜д゜)(´Д`。)。゚(゚´Д`゚)゚。うわ~ん!
よかったよー!!!
奇跡的に携帯がつながり、友人たちの安否を確認することができました!電話をかけたとき空港にいたらしく、国外逃亡するところだったようです。留学している友人たちが気の毒なのはもちろんなんですが、一番かわいそうなのはデモ前日にエジプトに遊びに来たバッドタイミングすぎる友人(♂)だと思います・・・。やっぱり巻き込まれて銃とか持ってる人に囲まれたらしい・・・。
友人のひとりはこのブログのリンクにもあるtasitaです。彼女はいま絶賛国外逃亡中ですが、インターネット落ち着いてネットできる環境になったら、彼女の口から今回のことについて語られるでしょう。
25日に端を発した今回の政変ですが、驚くほどの速さで状況が進行しています。エジプト時間の今日、2月1日にはカイロで100万人規模の集会が行われるようです。政府はエジプト各地から集まる民衆を止めようとしていますが、ムバラク大統領の退陣を求める民衆が止まることはないでしょう。民衆の声をうけて、30年以上エジプトの大統領でありつづけた彼はどうするのか・・・。
情報がインターネット上にあふれる今、私たちがすべきことは「知る」ことです。エジプトで何が起こるか、エジプトで起こったことが世界にどう影響するか、ひいてはどう自分に返ってくるか。
いまや情報は一部の人間のみが知る真実ではありません。距離的に遠くともライブで目の前に広がる現実です。開示された情報を見過ごすのではなく、見つめるべきなのです。
【関連リンク】
今北産業向け概略&リンク集 as of 1/31 20:22 JST
・エジプト政変のきっかけともなったツイッターを使った日本での情報交換のまとめ(Togetter)です。今からエジプト政変について知りたい人向けにわかりやすくまとめてあります。
TwitterやFacebookで呼びかけ――アラブの政変は何に対する戦いなのか?
・『Buisiness Mode誠』のコラム。今回の政変が“どうやって“、“なぜ”起きたか、そしてどこへ向かおうとしているのかその概要がわかります。
A Letter to the World
・「世界中のみなさまへ」と題されたエジプトの一青年からの匿名メッセージ(英語)。なぜ、人々はムバラク大統領の退陣を求めているのか、エジプトが外国から受け続けてきた影響とはなんだったのかが、真に迫る誠実な論調で書かれています。
速報874号 エジプトの若者からのメッセージ
・A Letter to the Worldを『Translators United for Peace』が翻訳したもの。原文を読みたい方は上のリンクから。
・イラク戦争でも活躍した報道機関、アル・ジャジーラのリアルタイムライブ中継。ひと時も目を離せないエジプトの「今」を発信し続けています。(英語)
・英国BBCもエジプトの政変を大きく取り上げています。Live Updatesでは、KeyPointsの項目に事件の要点がまとめられています。(英語)
・米国CNNによるエジプト現地テレビ放送のライブ配信。ほぼアラビア語で、時折英訳されるようですが、Egyptian State TV, Al Masrya TVの2局を視聴できます。(英語)
シェアありがとーーーー!!!!
返信削除自分は何も知ろうとしていなかった…愕然。
asukaがfacebookでみんなの無事を知らせてくれた時、ほんとに安心しました。ありがとうね。